このコラムでは、その時々の法律に関係する事柄や問題を取り上げ、当事務所弁護士が交代で、分かりやすい解説をして行くこととしています。なお、このコラムの解説は、情報提供を目的とするもので、助言を目的とするものではありません。当事務所及び執筆担当弁護士は、できるだけ正確な記載を心がけていますが、その正確性や具体的な事件・事象についての妥当性を保証するものではありません。また、このコラムに記載された内容の著作権は当事務所に帰属しており、無断転載はお断りします。


検察官の起訴の基準と検察審査会の判断-小沢一郎氏の起訴をめぐって

2011年2月16日  田中 利彦

1 はじめに

今年1月31日、元民主党代表の小沢一郎氏が東京地方裁判所の指定した弁護士により、政治資金規正法違反(収支報告書の虚偽記載)の事実で東京地裁に起訴された。この起訴は、検察審査会の起訴すべきとの議決(起訴議決)を受けて行われたものである。この事件をめぐってはいろいろな議論がされてきたが、検察審査会はどうして専門家である検察官が二度も不起訴処分にした事件を起訴すべきとしたのか、検察審査会はどういう基準でこういう結論に至ったのか、検察官と検察審査会の判断基準はなぜどのように違っているのかについての議論もそのひとつである。しかし、これまでの議論には混乱もあるように思われる。まずは検察審査会の制度について簡単に触れた上で、この問題について考えてみたい。 続きを読む